吉備塚古墳:大刀飾る人物は仙人 中国の神仙思想影響
 奈良教育大学は19日、奈良市高畑町の同大学内にある吉備塚古墳で見つかった三累環頭大刀(さんるいかんとうたち)について、刀身に描かれた人物像が、中国・南北朝時代の南斉(479~502年)の神仙思想の図柄に影響を受けた仙人像と発表した。南斉の皇帝の墓に描かれた仙人像の特徴と似ていることから判断した。
 03年12月、6世紀前半の埋葬施設から見つかった。大刀は長さ約93センチ、幅約3センチ。刀身に人物像や龍、虎、花の文様が表裏に刻まれ、人物像が龍や虎を導く図柄になっている。刀身に人物像が刻まれた象眼(表面に文様を刻み、金や銀をはめ込む技法)大刀としては全国初の出土として話題を呼んだ。

環頭大刀の象眼文様



 神仙思想は不老長寿の仙人にあこがれ、仙人を目指す思想。同大学の山岸公基助教授(日本・東洋美術史)が刀身の図柄を調査。中国・南北朝時代の南斉の皇帝、和帝の墓(502年埋葬)とみられる「呉家村墓」(中国・江蘇省)のレンガ壁に描かれた、仙人が龍を導く形で神仙思想を表現した絵と比較したところ、人物の耳が大きい▽肩やひじ、ひざから羽が生えているなどの特徴が似ていることが分かった。
 南斉は479年、日本の雄略天皇に「鎮東大将軍」の称号を贈ったことで知られる。山岸助教授は、和帝の墓の絵と同様の図柄の特徴が伝えられたのも南斉の時代の5世紀後半と想定。雄略天皇の時代に作られた象眼の鉄剣や大刀として、稲荷山古墳(埼玉県)と江田船山古墳(熊本県)の出土品が知られ、技法も似ているため、今回の大刀も5世紀後半に日本で作られたとみている。
 山岸助教授は「今回の大刀の図柄は、作った人が神仙思想をちゃんと理解していないと出来ないもので、日本での神仙思想の定着を示すものとして、文化史、精神史の上で大きな意義がある」と話した。
                 2006420日朝刊(毎日新聞)

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