会議名稱:「2007年度史学会大会」
日 期:2007年11月17日、18日
会 場:東京大学本郷キャンパス。
会議簡介:
1日目には、下記のとおり公開シンポジウム「琉球からみた世界史」を開催いたします。また2日目には、例年どおり日本史、東洋史、西洋史の各部会が行われるほか、2つの部会シンポジウムが開催されます。どなたでもご自由にご参加いただけますので、皆様奮ってご参加ください。
議 程:
11月17日
<公開シンポジウム>琉球からみた世界史
13:00~ 文学部1番大教室(法文2号館)
趣旨説明・司会 三谷 博(東京大学)
報告
古琉球をめぐる册封関係と海域交流 村井 章介(東京大学)
近世琉球王国の「自立」―册封・朝貢と領分のあいだ― 豊見山 和行(琉球大学)
1860~70年代の清琉関係―東アジアにおける册封・朝貢・互市の遷移― 川島 真(東京大学)
コメント
琉球王国の交流と册封 佐藤 信(東京大学)
近代における東アジア国際秩序の変容 與那覇 潤(日本学術振興会)
タイからみた朝貢と地域秩序 小泉 順子(京都大学)
シチリア王国から見た世界史 高山 博(東京大学)
討論
<総会> 17:30~ 山上会館地下会議室 地図
<懇親会>18:00~ 山上会館地下会議室
会費 3,000円(立食形式です お気軽にご参集下さい)
11月18日(日) 日本史部会 東洋史部会(日本近世.近現及西洋史部会議程從略)
日本史部会
<第1会場>(古代) 法文2号館1番大教室
研究発表 9:30~12:00
地方軍制における押領使 澤 晶裕
改新詔の郡の等級規定からみた国造制と屯倉制―大化前代の地域編成― 北 康宏
霊異記引用経典からみた地方の仏教 寺西 貞弘
摂関期の災異と天皇 有富 純也
チャイナタウン唐坊と宗像大宮司の日宋貿易拠点・筑前国高田牧 服部 英雄
日本古代史・東洋史合同シンポジウム「律令制研究の新段階」
13:00~17:00
趣旨説明・司会 大津 透
挨拶 池田 温
報告
天聖「獄官令」と宋初の司法制度 辻 正博
律令国家と假寧制度―令と礼の継受をめぐって― 丸山裕美子
律令倉庫制度の特質 武井 紀子
律令制成立の諸問題 大隅 清陽
コメント 妹尾 達彦
鈴木 靖民
<第2会場>(中世) 法文2号館2番大教室
研究発表 9:30~12:00
院政期の挙状と権門裁判 佐藤 雄基
中世における交通―丸子地名の特性を探る― 鈴木 沙織
一遍聖絵の図像学―一遍臨終場面を中心に― 佐々木弘美
中世の書跡にみる和様と唐様 宮﨑 肇
中世後期における武家と受領官途―在地効果説をめぐって―木下 聡
シンポジウム「「人のつながり」の中世」
13:00~17:00
趣旨説明・司会 村井 章介
報告
中世の家と朝廷社会 遠藤 珠紀
国人・侍の一揆とその歴史的展開 呉座 勇一
中世僧侶集団の内部規範 大塚 紀弘
コメント 桜井 英治
岸本 美緒
東洋史部会 法文1号館113番教室
研究発表 10:00~12:00
戦国『日書』と三合 海老根量介、平勢隆郎
東晋南朝における天下観について―王畿、神州の理解をめぐって― 戸川 貴行
唐少陽院考 佐藤 和彦
宋代地方官学とその地域イメージ 梅村 尚樹
研究発表 13:00~17:00
なぜ宣教師は「消された」のか―マニラからの遺体返還請求と乾隆中期の対外政策― 小俣日登美
清代中国にもたらされた蘇禄の国書 三王 昌代
清末の幕僚について―張之洞の幕僚を中心に― 山本 一
20世紀前半の中国司法における女子財産継承権 北村 祐子
英領マラヤにおける人口統計の変遷とマレー人概念の形成 坪井 祐司
突厥第二可汗国の歴史観―キョル=テギン碑文東面冒頭の再検討― 鈴木 宏節
アッバース朝末期(12世紀後半~13世紀前半)カリフ政権の対外関係について 原山 隆広
民族名称「ウイグル」に関する一考察―20世紀前半期におけるウイグル知識人の著作および定期刊行物を事例として― 清水由里子
<シンポジウム趣旨>
公開シンポジウム「琉球からみた世界史」
14世紀以降、多様な交流の中で生成・展開した琉球の歴史は、東アジアや世界の歴史の中に置くとき、どのように捉えることができるだろうか。最近の歴史学界では「帝国と周縁」、「冊封・朝貢・互市」などのリージョナルな秩序の問題が、国際秩序と交易の関係や儀礼の役割といった普遍的な視角から再検討されつつある。琉球史・日本史・中国史などの研究者からの報告と、日本・東南アジア・地中海世界などの専門家からのコメントをもとに、前近代から近代初期にかけての琉球史が世界史の理解にどのような光を投げかけるかを、多角的に検討したい。
日本古代史・東洋史合同シンポジウム「律令制研究の新段階」
史学会では、1991年第89回大会において、日本史・東洋史合同シンポジウム「律令制研究の課題」を、2000年第98回大会においてシンポジウム「律令制研究の現段階」を企画し、多くの参加者を得た。この間、1997年に池田温氏を中心に『唐令拾遺補』の大冊が刊行され、20世紀の唐令の復元研究もほぼ集大成されたと考えられたのだが、寧波の天一閣博物館から大量の唐令逸文を含む北宋天聖令写本が伝存していることが伝えられ、律令制研究の一層の発展が期待されていた。
昨年11月になり、中国社会科学院歴史研究所の黄正建氏や宋家鈺氏を中心とするメンバーの努力により『天一閣蔵明鈔本天聖令校証』上下2冊が中華書局から出版され、鶴首されていた天聖令巻21~30の全文テキストが詳しい校訂だけでなく唐令復原案まで付されて公表された。これを受けとめて日本における律令研究を進展させることが我々の使命であろうが、ここではそのひとつの試みとして、律令制研究の最前線で活躍している中堅から新進の研究者の報告を得て、議論の場を作ることとした。
天聖令の発見による日唐令の比較の新たな進展をふまえ、中国史研究・日本古代史研究の様々な場面での新たな問題設定と議論の深まりが期待される。もちろん個々の報告の豊かな独創性が主眼ではあるが、日本令が散逸した倉庫令や医疾令を初め、研究の少ない仮寧令や喪葬令など礼制や官僚制に密接に関わる部分が発見されたことにより、日唐の律令制の特色が明らかになり、会場からの討論により広い視点から新鮮な論点が提供され、学界全体の課題を見つめ直す機会になればと思うものである。(大津 透)
日本中世史部会シンポジウム「「人のつながり」の中世」
近代の「国民一般」のような斉一的な関係が未成立の中世社会では、それぞれ独自の結合原理をもつもろもろの人間集団が併存していた。そこには「大法」と呼ばれるような、集団を律する慣習法が存在し、謡曲「自然居士」に描かれるように、複数の「大法」がせめぎ合う場面も見られた。無数に存在したそのような人間集団を、中世社会の特質に即して大きくまとめるとすれば、朝廷を中心とする公家社会、幕府や大名を中心とする武家社会、宗教勢力としての寺院社会(神社を含む)の三者が浮上する。
権門体制論は、右のような異質な集団や法の並立という中世社会の特質を、国家権力の構成要素という面から説明しようとした。いわば、空から見下ろす視線によって、見取り図を描こうとしたものといえる。
これに対して、本シンポジウムでは、公家・武家・寺院それぞれの内部に、どんな自/他認識や、秩序体系や、上昇・改良指向があったのか、といった問題群を、各社会集団を成立せしめている「人のつながり」の原理に立ちもどって考察する。いわば、底辺から見上げる視線で、社会集団の特徴を探りあてようとする。それをふまえて、異なる集団相互の提携や争闘が、中世社会にどのような陰影を与えたかにまで、論が及べば幸いである。
シンポジウムの構成は以下の通り。まず三名の気鋭の研究者が主報告をおこなう。東京大学史料編纂所の遠藤珠紀氏が底辺までを含む公家集団を、東京大学大学院博士課程の呉座勇一氏が中世後期を特徴づける国人一揆を、同課程の大塚紀弘氏が仏教改革運動の主体となった僧侶集団を、それぞれ素材として論じる。休憩をはさんで、桜井英治氏が流通ネットワークからの視点をふまえて、また、岸本美緒氏が明清時代の社会集団との対比から、それぞれコメントを加える。全体の進行とまとめを、東京大学大学院人文社会系研究科の村井章介が担当する。
討論の時間をできるだけ確保するつもりなので、フロアからの積極的な発言を期待したい。(村井 章介)
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