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「『東アジアの經典解釋における言語分析』第一回國際學術シンポジウム参加報告」


近藤浩之(北海道大学文学研究科)


轉載自《日本中国学会便り》(2006年第2号)


 北海道大学と台湾大学は、2005年3月に大学間交流協定を締結し、学生の交換留学等が実現し、学術の交流と協力が積極的に進められている。
 その交流協力活動の中でも重要な活動の一つとして、「東アジアの經典解釋における言語分析」第一回國際學術シンポジウム(首屆東亞經典詮釋中的語文分析國際學術研討會 Inaugural International Symposium on Interpretations of Classics in Philological Analysis in East Asia)が、2006年8月23日~25日に、北海道大学文学研究科と台湾大学人文社会高等研究院および国科会経典詮釈中的語文分析研究計画の共催で、北海道大学百年記念会館大会議室において開催された。
 開会式では、共催する双方の代表者、佐藤錬太郎教授(北海道大学文学研究科)・鄭吉雄教授(台湾大学中国文学系)の挨拶、北海道大学・台湾大学両学の副学長の祝辞の披露が行なわれ、さらに、体調不良のため已むなく参加されなかった伊東倫厚教授(北海道大学文学研究科)からの祝辞も伝えられた。今回のシンポジウムは、経典・解釈・文献学の三者間の密接な関係に着目し、東アジア地域における、儒家と仏教、言語と哲理、文献と思想、解釈と言語分析などの間の、異なった研究方法や理論を融合して、経典の文化的価値及び東アジアの精神的伝統をより深く広く探究し継承していくことが目指されている。
 また、今回のシンポジウムは「文献と解釈研究フォーラム(2006~2010年)」の第一回に当たるので、開会式では、フォーラムの構成と計画について簡単な紹介もなされた。本フォーラムは、国境の枠を超えた学術共同組織であり、主にアジアと北米の学界の研究者150人余りによって構成される。2006年から2010年まで、台湾大学の鄭吉雄・甘懐真、東京大学の平勢隆郎、関西大学の吾妻重二、北海道大学の佐藤錬太郎、ペンシルバニア州立大学の伍安祖、シンガポール大学の労悦強、北京大学の顧歆藝・顧永新の九名の構成員によって、順番に学術シンポジウムが開催される。来年以降は台湾大学で第二回、北京大学で第三回、シンガポール大学で第四回が予定されている(詳しくは、文獻與詮釋研究論壇のホームページ:http://eastasia.csie.org/fsctt/zh/ を参照)。
 さて、本会議の内容については、あらかじめポスターで「発表者および発表題目」は公表されており、各発表内容についても、日中両国語で予稿集が用意されて関係者に事前に配布され、その予稿集に収められなかった原稿は発表当日に受付で配布された。発表は基本的に中国語で行なわれ、適宜、通訳もなされた。実際の発表順に従って紹介すれば、発表者および発表題目は次の通りである(なお、ポスターの「発表題目」と若干異なるものもあるが、ここに示すのが実際に発表された題目である)。
 鄭吉雄(台湾大学中国文学系)「論易道主剛」、楊秀芳(台湾大学中国文学系)「從詞族觀點看「天行健」的意義」、近藤浩之(北海道大学文学研究科)「「神明」的思想――以『易』傳爲中心」、沈婉霖(清華大学博士研究生)「從甲骨、金文辭例重看《易經》〈屯〉卦之意象」、三浦秀一(東北大学文学研究科)「十六世紀中國における陽明學と老莊思想の出會い:朱得之《莊子通義》を手掛かりに」、林啓屏(政治大学中国文学系)「儒家思想中的知行觀――以孟子、象山、陽明爲例」、佐藤錬太郎(北海道大学文学研究科)「「心外無法」の系譜――禪學、心學、陽明學、そして武道」、松江崇(北海道大学文学研究科)「略談《六度集經》語言的口語性――以疑問代詞系統爲例」、羅因(台湾大学中国文学系)「漢譯説一切有部中兩種佛傳中對於佛陀的不同詮釋」、殘和順(北海道大学文学研究科)「『論語鄭氏注』の思想的特色」、水上雅晴(北海道大学文学研究科)「明經博士家の『論語』解釋――清原宣賢の場合――」、魏培泉(中央研究院語言学研究所)「《關尹子》非先秦作品之語言證據」、佐藤將之(台湾大学哲学系)「「變化」的象徴化與秩序化:〈易傳〉的聖人與《荀子》的君王」、徐富昌(台湾大学中国文学系大学)「論簡帛典籍中的異文問題」、劉文清(台湾大学中国文学系大学)「惠棟《九經古義》之解經觀念──「經之義存乎訓」探微」、名畑嘉則(藤女子大学文学部)「二程子の“經”學――朱熹の批判を通して見る程・朱の立場の相違――」、王家泠(台湾大学博士研究生)「魏晉南北朝「神明」觀念的變遷」、松本武晃(北海道大学博士課程)「日本における『春秋胡傳』の受容」、田村將(北海道大学博士課程)「劉逢祿の經世思想に對する再檢討――「通三統」説を中心として――」、以上、三日間にわたって台湾側から10、日本側から9、合計19の発表が行なわれた。
 会議全体を通して、仏教経典・儒家教典などの経典解釈に関する言語学・文字学・訓詁学、および解釈と思想の各方面からの新たな方法や視点が報告されて、それぞれの専門分野の研究者が相互に刺激を受け合い、活発に質疑し意見を交換していた。このような広い分野にまたがるシンポジウムの場合、往々にして個別的でつながりのない報告の羅列のようになってしまうものだが、このシンポジウムでは、発表の組合せや順序がよく工夫され、さらに会議後の和やかなレセプションなどを通して、異なる専門分野の研究者同士が対話する機会が多く、本当の意味で学際的交流とその深化がなされたという印象を受けた。例えば、思想の分野を専門とする私個人にとって言うならば、松江崇氏と魏培泉氏による言語学の分野からの発表は、疑問代詞の用法や「即」「是」「所以」「可V+O」「不V之」などの語法の丹念な分析から、かなり明瞭な傾向と結論が導き出せることを示しており、思想的分析だけでは得られない確かな証拠やデータの抽出の方法について、学ぶべき所が多かった。おそらく同様に、各分野の研究者がその他の分野の研究者から多くの啓発を受けたはずである。引き続き、今後の「文献と解釈研究フォーラム(2006~2010年)」の活動と展開が大いに期待される。
 本シンポジウムの成果は、各発表内容の推敲を経て、来年には台湾と日本で、それぞれ中国語と日本語の論文集として出版・公開される予定である。


本シンポジウムについての問合せ先:
北海道大学大学院文学研究科中国文化論講座
  〒060-0810 北海道札幌市北区北10条西7丁目
  電話・FAX:011-706-3018/3051

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