金子修一,『中国古代皇帝祭祀の研究』,東京:岩波書店。
■体裁=A5判・上製・函入・600頁
■定価 13,650円(本体 13,000円 + 税5%)
■2006年4月27日
■ISBN4-00-023835-3 C3022
簡介 漢代から唐代までの皇帝祭祀――とりわけ最重要の祭祀である郊祀(天地)・宗廟(祖先)および即位儀礼――について,その制度と運用の実態とを時代ごとに詳しく解明する論考を体系的に集成.中国古代における皇帝支配の特質を明らかにするとともに,歴史学のテーマとしての祭祀儀礼研究・礼制研究の意義と可能性を示す.
作者一言
皇帝の行う祭祀というと,現実世界から遊離した煩瑣な儀礼が想像されるかもしれない.中国では,儒教の経書(けいしょ)をもとにした皇帝祭祀が前漢末から後漢初頭に成立し,後世に受け継がれた.北京の名所の一つ天壇(てんだん)公園も,明・清の皇帝が天を祀った場所である.経書の内容は変わらないから,中国の皇帝祭祀制度の枠組み自体は後漢から清朝まであまり変わらなかったといえる.しかし,運用の実態を探ると,各王朝において大きな相違を見せていることが判明する.
本書は,皇帝の祭祀の中でも重要な郊祀(天地の祭祀)と宗廟(祖先の祭祀)について,漢から唐までの制度と運用実態の両面から明らかにしたものである.
私がこの問題に着手した30年前には,各王朝の制度そのものから明らかにする必要があった.ところが唐代では,実際には皇帝が自分で行う皇帝親祭と役人が代行する有司摂事(ゆうしせつじ)との区別があることも判った.そこで遡って調べてみると,後漢末から三国初期,西晉から東晉への移行期,という動乱期に天の祭祀が皇帝親祭で頻繁に行われていた,つまり,王朝が危機的な情況に陥ると,皇帝親祭が意識的に運用されるようになるのである.
その後,東晉や南朝では郊祀や宗廟の祭祀が皇帝親祭で定期的に行われ,一方で北朝は南朝に対抗して皇帝や天子を名乗るために中国の郊祀を導入した.しかし,遊牧民族には伝統的な天の祭祀もあるので,初期にはそれが皇帝親祭,郊祀が有司摂事で行われた.こうして,北朝で皇帝親祭と有司摂事とを使い分けるやり方が登場し,唐代に至るのである.唐の次の宋代に至ると,3年に一度の皇帝親祭による冬至の郊祀が首都を挙げてのイベントとなるが,その下地は北朝から唐にかけて用意されたのである.
このように,制度のうえではほとんど同じように見える皇帝の祭祀も,運用の実態を見ていくとさまざまな変化があった.こうした皇帝祭祀の諸側面を明らかにすることで,中国の皇帝支配のさまざまな特色が見てとれるのである.
註:作者自2005年秋起為國學院大學文學部教授。
目 次
前言 | |||||||||
序章 皇帝支配と皇帝祭祀――唐代の大祀・中祀・小祀を手がかりに | |||||||||
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第一章 魏晉南北朝における郊祀・宗廟の制度 | |||||||||||
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第二章 唐代における郊祀・宗廟の制度 | |||||||||||
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第三章 唐代皇帝祭祀の親祭と有司摂事 | |||||||||||
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第四章 漢代における郊祀・宗廟制度の形成とその運用 | |||||||||
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第五章 魏晉南朝における郊祀・宗廟の運用 | |||||||||||||||||
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第六章 北朝における郊祀・宗廟の運用 | |||||||||||
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第七章 唐代における郊祀・宗廟の運用 | |||||||||
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第八章 中国古代の即位儀礼と郊祀・宗廟 | |||||||||||||
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終章 郊祀・宗廟及び即位儀礼より見た中国古代皇帝制度の特質 | |||||
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図表一覧 | |
書 後 | |
事項索引 | |
人名索引 |
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